zencro’s diary

乱╲(・ω・)/歩 ╲(・ω・)/奇╲(・ω・)/譚

GW

検死結果を聞かせた後で、ミナミ検死官はカガミに、二十面相との橋渡しを申し出た。
自分は原初と繋がっている。この先は暗黒星に任せればよいのだ、と。
警視庁所属の検死官が二十面相と内通していたというのに、カガミは驚きも見せない。
むしろ彼自らが直接執行者になると言い、ミナミ検視官に、これから行う断罪行動についての協力を仰いだ。

「いいの…?そんなことしても、彼女は戻ってこないのよ?」
自分から誘っておきながらも、ミナミはカガミにそう尋ねた。
「そう言う君も、弟を喪いながらも今まで続けてきたのだろう?」
カガミは小柄な体を見下ろしながら低い声で答えた。
「俺の進むべきは、もうこの道しかありえない」

わかってる。
あんたはそうせずにはいられない。
いいわ、わたしが全てお膳立てしてあげる。
アケチ君の連絡係になったのがあんたの運の尽きね。
そう仕向けられていたとも知らずに、あんたは先触れになるのよ。
甘い断罪の蜜に群がり世界を覆いつくす二十面相の群れの先導者に。

わかっている。
俺は正義を謳う警察官を気取りながら、トキコを守ることすらできなかった。
俺はトキコに、誰かが悲しむのを少しでも減らしたい、と言った。
俺はそれを時間の許す限り為し続けなければならない。
法に依らず裁く者の存在を喧伝し、償いを知らぬ罪びとどもを狩らなければならない。

…警告してくれたのに済まない。俺は呑まれてしまった、堕ちてしまったよアケチ君。
ナカムラさん、滑稽でしょう。あなたが教え導いたカガミ警視は、若干十七歳の少年に付き従い前代未聞な警察の面汚しとなるんです。
二人を裏切る事になった、それがただ辛い。

トキコ、お前のくれたこのネクタイは穢らわしい返り血で汚れないように外しておくよ。
これから俺がすることをお前が見ずに済むのは、俺にとって微かな救いだ。

断罪の衣装と仮面を身につけるとともに俺は現二十面相へと羽化する。
そして、かつてカガミであったものを一片残らず喰らいつくしてしまうだろう。



「なんでこんなことしたんすか、カガミ警視」

我ながらなんと白々しいことをいうものだ、とナカムラは思った。

現二十面相になったといっても、その手で酸鼻極まる殺戮を重ねたとしても、目の前にいる男はあまりにも、あのカガミその人で。
この限りない可能性に満ちた若者を、長いこと傍にいたのに自分はみすみす地獄に堕としてしまった。
いや何よりも。
今はこいつの前に出るのが怖くて仕方がない。
何を言ってやればよいのかまるでわからない。
目の前には天をつく断崖がそびえているようで、途方に暮れるばかりだ。
ああほんとうにカガミちゃんのままでいればよかったのに、なんて考える。
おれなど役に立てそうな気もしない。
では、逃げるか?
断じて嫌だ。他の奴にこいつをゆだねるなんて絶対に。
でも、でも、と。
怯え、おろおろしながらみっともない姿を晒しながら。
ナカムラは、今日もカガミのいる部屋の扉の重いドアノブへ、おっかなびっくり手を伸ばすのだ。