zencro’s diary

乱╲(・ω・)/歩 ╲(・ω・)/奇╲(・ω・)/譚

こたつ

「ただいまっと、ひゃあ寒い寒い~」
靴を脱ぐのももどかしく、ナカムラはドアを開けるとバタバタ室内に駆け込んだ。
「おかえりなさいナカムラさ…うわっ!」振り返ると同時にいきなり抱きついてきたナカムラに、カガミは目を白黒させる。
「わあー、カガミあったかいなあー!」「ちょっ、ナカムラさん!危ないです、離してください!」右手に持った包丁がナカムラの体に触れないように必死で体をよじる。
「だってさー、外すっごい寒かったんだよー?はー、あったけー!やっぱあれかね、カガミ夏生まれじゃん、11月生まれのおれより体温高めなんじゃないの?」
あいかわらずしがみついて話を続けるナカムラ。カガミはおっかなびっくり後ろへ右手をまわし包丁をまな板の上に置くと、ぶら下がるように抱きついているナカムラの肩をぐっとつかんで引き離し、そのまま半ば引きずるようにしてこたつへ誘導した。
「ちぇー、カガミつれねえなー」
「いま炊事中ですからこたつにあたっててください。あぁ、そのままじゃスーツがしわになりますから!着替えてからですよ、ナカムラさん」
「はぁーいはいはい」
「はいは一度でいいです」
「はーい、カガミはおっかないですねえ、ミィくん~」
ナカムラは、今度はこたつのそばで丸まっていた猫にすり寄り話しかける。
「なんだよー、逃げないで一緒にコタツに入ろうぜぇー」と、鬱陶しそうに腕から逃れようとする猫をぎゅうと抱きしめる。
いやそうな鳴き声を背後に聞きながら(ああ、毛がスーツに…あとでブラシかけなくちゃ)とカガミは心の中で思いため息を吐いた。

「…ナカムラさん、鍋の用意できましたのでこたつの上空けてください」
しばらくして声をかけたが、返事がない。
(また、こたつで寝ちゃったのかな)と部屋へ振り返ると、ナカムラの姿は見えず、猫だけが悠々とこたつ布団の上に丸まっている。
「あれ?ナカムラさん?」
鍋をガスコンロに戻しこたつのほうに近づいたが、ナカムラは忽然と姿を消して…
「えっ!?」いや、白いくつしたを履いた足の先が、こたつの布団からはみ出して見えた。
「~~~!ナカムラさんっ!!」
こたつ布団をばっとめくると、信じがたいことに頭からすっぽりこたつの中にはまりこんで寝ているナカムラの姿。
「ちょっと、だめですよ熱すぎてやけどしますよ!というか、それでよく息苦しくならないですね、ほら出てくださいナカムラさん!」
「うーーー」中で目を開けたナカムラは、さすがに熱かったのかもぞもぞこたつの下から這い出る。「ふいー、あつかっ…」
「当たり前ですッッッ!!!」
「うええ、ごめんー」
「どーしてそんな子供みたいなことするんですか~」
「だってさ、足だけ入っても腰が冷えるじゃん?で、寝そべって腹んとこまで入るよね」と再現して見せるナカムラ。
「そうすっと次は肩が寒くなって、肩まで潜ったらこんどは顔がつめたーくなってきて」そしてすっぽり頭まで布団にもぐってしまった。
「…ほらね、必然の流れでしょー?」
頭をひょこっと布団の外に出して、若干とくいそうにカガミを見上げる。
そんな無邪気な顔を見て、もう何も言う気力がなくなったカガミ。
「はいはい、わかりました…さあ、ごはんにしますから、こたつから出てくださいね」
「はぁい」

かくして、ようやくこたつの上に卓上コンロを置き、豆乳鍋を始めるふたり。
「おいしいねえ、とうふー」
「寒いときはやはり鍋が一番ですね」
(ナカムラさんて、以前からこんな子供っぽいとこ、あったかなあ?)
無精ひげの無邪気な笑顔をみつめながら、カガミは思った。
それが、自分のせいだとは考えもつかずに。