zencro’s diary

乱╲(・ω・)/歩 ╲(・ω・)/奇╲(・ω・)/譚

銀杏

秋も終わりで日もとっぷり暮れて、公園にはひとっ子ひとりいない。
街灯が点灯するなか署へと急ぐナカムラとカガミは、連日の地味な捜査活動で疲労困憊だった。
「ナカムラさん」
「んー」
「銀杏の落ち葉、ふわふわですね」
「そだねー」
「倒れ込んだら、ふとんみたいに気持ちよさそうですね」
足もと一面に降り積もった黄色の葉は、沈みこむ足を柔らかく優しく包みこんでいる。
「ふむぅ」
ナカムラは、ちらと隣を歩くカガミを盗み見る。
能面のような顔だ。
(よほど、疲れたんだな)
「そうだね、倒れてみようか」
「え」
急にナカムラが膝から崩れるように、地面に倒れ込む。
「ナ、ナカムラさん、…わ」
コートの裾をいきなり引っ張られ、虚をつかれてカガミはバランスを崩した。「わっ、わ」
つぎの瞬間にはふたりとも黄色い銀杏の絨毯の上で、星空を見上げ転がっていた。
「危ないじゃないですか...」
「ふふ、ごめんね」
黄色くて柔らかい葉を掻きまわしながらナカムラは詫びた。
「葉っぱの下に石ころがあったら怪我しますよ」
「そうだねー、犬のフンとかあったらばっちいよねえ」
「…え!」
ぎょっとしてカガミが身をおこしかける。
「大丈夫みたいだよ、今はねー。ははは」
「…もう、知りませんよ」
カガミは呆れたのと疲れたのとで、諦めてまた黄色い葉の上に倒れ込んだ。耳元で、葉っぱがかさかさ音を立てる。
「カガミくん、星が出てるねぇー」
「そうですね」
「あれ…カガミくん怒ってる?」
「怒ってません」
「ごめんね」
「怒ってませんてば」
「ははは」
「何がおかしいんですか」
「だってさ、大のおとながふたりしてこんな往来で寝っ転がってさ」
「誰のせいでこうなったと思うんです」
「ふふふ」
「笑わないでください」
「へへへ」
「ほんとに怒りますよ」
「だからさ、ごめんってば」
「ぜんぜん反省してないじゃないですか」
「そうだよねぇーゴメンで済めばケーサツは要らないよねぇ、あははは」
カガミはとうに怒りも消えて、馬鹿らしさもなにも夜風にとけて、おかしさだけが湧きおこる。
「くく」
「…カガミくん?」
「ふ、くふふふ」
「あははは」「くふふふ」
大のおとながふたり、きんいろに敷きつめられた落ち葉ぶとんの上で、星空を見上げて笑い続けた。

「…っくしゅん」
ナカムラのくしゃみで、カガミはハッと我に返る。
「いけない、帰りましょう」
「そだねえ」
「冷えて風邪ひきます」
「はぁい」
よっこらしょと立ち上がり、ぱたぱた自分や互いのコートや頭をはたき、粉になった黄色い葉っぱを払い落とす。
「いこか」
「…はい」

空にきらきら銀の星、地にはふわふわ金色の布団。