zencro’s diary

乱歩奇譚SS

得意料理

「得意料理?」
「ナカムラさんの料理は全て美味しいですが、最も自慢できるものって何だろうかと」
「そーだなー」
「あ、私はナカムラさんの作るきんぴらごぼうが特に大好きですが」
「が?」
きんぴらごぼうを炊きたてご飯にのっけていただくのがすごく美味くて」
「ふむ」
「で、ナカムラさんのナンバーワンと思う料理をのっけたら、きんぴらごぼうと比べてどんなかなと」
期待に目をキラキラさせて、ナカムラの返答を待つカガミ。
「ふうむ」
顎に手を当て猫背でナカムラは考え込む。が、すぐにパチッとまぶたを開けた。
「あー、カレーだなー」
「カレー、ですか?あの市販のルー使ったカレーが?」
うまいっしょ?」
「はい!…ですが、ナカムラさんの最たる得意料理が市販ルーを使ったカレーとは」
「落ち込んで、疲れ切って、もう倒れ込んでこのまま地面に同化しちゃいたいなーって思う時も、あの匂いをかぐと食欲がわくんだよねー」
「…あぁ、わかる気がします」
「で、あの美味そうな匂いをかぐために、玉ねぎ刻んでにんじんやじゃがいもの皮むいてさ、寒い冬も冷たい水をいとわず米もといでごはんを炊こう、って奮い立つんだよねぇ。市販のカレールー、最強だよ?間違いなく美味いものができる」
「なるほど…レトルトも美味しいですが、野菜や肉のゴロゴロ感に乏しいところが寂しいですね」
「そーそー。それに、冷蔵庫にある肉や野菜、あんがい何でも行けちゃうとこが良いし、なんつっても『料理した!』って気になる」
「あ、こないだの厚揚げといんげんの入ったカレーもおいしかったです!」
「カレーって包容力あるよねー」ナカムラは笑う。
「やがてカレールーとかしたナベから、あのいい匂いがしてくる。そして思うんだ、…あぁ、きょうも頑張ったなー、疲れたけど、凹んだけど、それでもちゃんと料理して、こんなにいい匂いがするものこしらえたぞー、って」
「ナカムラさんの得意料理とは、生きる力が湧く料理なんですね」
「”間違いなく”チカラが湧くカレー、ね」
「”間違いなく”」
「ま、暗示もあるけどね~。パブロフの犬みたいなアレかな~」
「なるほど」

「カレー、つくろっか?」