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zencro’s diary

乱歩奇譚SSと雑記

ホットケーキ 続

「アケチ先輩は、どうしてカガミさんを連絡係に指名したんですか?」
「なんだ今さら」
「カガミさんて立派な刑事さんだし先輩が白羽の矢を立てるの分かりますけど」
「ふん」
「でも、ナカムラさんもいましたよね。カガミさんに決定した理由って何でしょう」
「べつにー カガミなら裏もなさそうだし扱いやすいと思っただけだ」
「ナカムラさんは?」
「あいつは胡散臭すぎるだろ」
「はぁ、なるほど」
「おいおいちょっと、ふたりともわたしへのフォロー無しぃ?ひっどいなー」
「あれ、ナカムラさんいつからそこに?」
「一応チャイム鳴らしたんだよーでも応答無いし、ノブ回したら開くし」
「ああ、チャイムなら故障中だ」
「ええ?!探偵業やってるのにそれダメなんじゃない?客帰っちゃうじゃない」
「ぼくもそう思うんですが先輩が業者呼ぶの嫌がるんですよー、ひとみしりだから」
「おい、失礼なことを言うな」
「あ、いまの口調カガミさんみたいですね」
「うるさい」
「まあまあ、探偵さんもまだ十代だしいろいろあるよねー」
「お前もいいかげんなことを言うな」
「だいじょうぶでしょ、チャイム修理なら入口辺りで作業するだけだし部屋の奥にまで入ってこないから。とっとと直しちゃいなよ」
「そうですよ先輩、お客さんが来ないとぼく退屈です」
「おまえの退屈を晴らすために探偵やってるんじゃないぞ、帰れ」
「ハシバ君も財閥跡取りの勉強で最近あまり遊んでくれないし」
「おや、君の事に関してはあんなに過保護だったハシバ君がねえ」
「ナカムラさんも二十面相後はほとんど事件持ってきてくれなくなったし」
「あははー平和がいちばんでしょ、コバヤシ君」
「んーもぅ、みんな落ち着いちゃってつまらないなあー」
「そうだな」
「へ?」
「確かに最近頭を使うほどの事件が無い。おいナカムラ、今日は何か面白い話でも持ってきたか」
「もー探偵さんも不謹慎だなあ、しがない連絡係にあんまり期待しすぎないでよー来づらくなっちゃうじゃない」
「大した用件も無いのにわざわざ階段上ってここに来るほどヒマなのか刑事は」
「あーそうそう、いいかげんエレベータ直してくんないかなあ、けっこう慣れたつもりだけどまだキツイんだよー」
「そうだ、パーティーしましょう」
「え、なんの?」
「アリスであるじゃないですか、なんでもない日、おめでとう!…って」
「ばかばかしい」
「先輩も参加してくださいよーほら、この間みたいにホットケーキでいいです!今まで食べた中でいちばんおいしかったし」
「オレがそう何度も言うこときいてやると思うのか?」
「えぇー」
「あー、あのさぁ探偵さん」
「何だ」
「えーとね、」
「なんだ、さっさと言え」
「…その、ホットケーキさ、よかったら作ってくれないかなー カガミがさ、あいつ好物だったみたいでね、前に作ってもらって嬉しかったみたいでさ、たびたび話題に出してたんだよね。君のホットケーキ」
「あいつが?」
「うん。持ってってやりたいんだよ、探偵さんが作ったホットケーキ」
「…持っていく間に冷めちまうだろどうせ」
「ま、そうだけど、ね…でも」
「フン」
「先輩、こんなこともあろうかと、ぼく材料買いそろえておきましたー!」
「やるねえコバヤシ君。あ、わたしも手伝うよ」


みんなで焼こう、ホットケーキ。
そして、カガミのためにもう一枚。


(このSSはホットケーキの続編です)