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zencro’s diary

乱歩奇譚SSと雑記

針路2

「えい」
僕にしては律儀に、自分もくるくる回って地球儀を指差した。
この地球儀には陸地が高地低地とそれなりにリアルに隆起した処理を施されている。指先に凸面の感触があって、(やったぁ陸地だ!)とわかりゆっくり目をあけた。
「インドかー、ええと、ベナ…レス?」
聞いたことはあるなあ。渡航可能だよね。
行先が決まってよかった。あした先生に国際学生証とか頼めるかきこう。
でも僕、中学卒業してから渡航するつもりだし高校は入学しないから、国際青年証だよね?
「……あれ」
ここまで来て何だけど。
「僕、なんで孤独になりたいんだろう?」

***

「何言ってるんだよコバヤシ!」
あんのじょうハシバ君は怒った。
「ごめんね、ハシバ君にとっても大事な時期に、せっかく君が僕のためにいろいろ考えてくれたのに。」
「いや、それはいいけど…なんで海外に行かなきゃならないんだ?しかも、興味のある国があるわけじゃないのに、そんないい加減な方法で行先を決めるなんて!いくらコバヤシでも無鉄砲すぎるだろ?」
もっともなことばかりだよね。ハシバ君は、もっともなことしか言わない。
「ハシバ君は、お父さんの後を継ぐためにたくさん勉強する必要があるから高校行くんだよね。じゃあ、僕は何のために高校行くんだろう。中学までは義務教育だからしょうがないけど、高校は勉強続けたい人が行くんでしょ?僕、特に学校で勉強したいとは思わないんだ。でもすぐ働きたい職があるわけでもないし、だからさ」
「だから、なんで海外なんだよ。しかもインド?おまえ、英語だってそんなに得意じゃないだろ?言葉通じないところへ留学するのか?」
「留学じゃないんだよ。ビザとって長期滞在するんだ。それでねハシバ君、ベナレスってさ」
「コバヤシ、ただ旅行しに行くだけなのか?なら、学校の夏休みや試験休みを利用して行けばいいじゃないか。」
「んー、ほんとはインドだけじゃなくって、行く先々でビザとっていろんな国を渡り歩きたいんだー。まだ調べてないんだけどさ、未成年でも大丈夫かなあ?」
「大丈夫なわけないだろ、そんなに行きたいなら俺が未成年も参加できる安全なツアーを探してやるから、あんまり無茶ばかり言うなよ」

あ。

「コバヤシ?おい聞いてるのか?」
「……うん、ハシバ君ごめんね、よく考えてみるよ。ありがとう、じゃあね。」
「考えるんじゃなく、考え直せよー」

気づかわし気なハシバ君の声に、笑って手を振る。

ごめんね、ハシバ君。