zencro’s diary

乱歩奇譚SSと雑記

未解決


「カガミ?や、俺は仕事以外あんま話したことなかったから。他の奴らもそうなんじゃない?だってあいつまじめでガッチガチなんだもん、なんか言うとムキになって怒っちゃいそうでさ、ちょっと構えちゃうんだよね。二十面相になったの今にして思えば奴がまじめすぎたせいなんだろうね。でもさ、妹があんなやつにあんな殺され方しただろ、ブチ切れないほうが不思議なんじゃない?あいつ、優秀なだけに不憫だよな。」

「彼、確かに顔整ってるしいい人だけど、かたっ苦しいのよね。モテたかって言われるとうーん…だよね。プライベートで一緒してた人なんていないんじゃないかな。面倒見てたナカムラさんとだって、呑みに行ったの例の事件の直前のほかはそう無いんじゃない?誰かが誘ってもさ、たいてい断るし。まあ家に妹独りじゃ心配だと思うし現にあんなことになっちゃったしね。」

「署内で調査が続いてるんだよね。3年前の原初二十面相が出てきたときさ、シンパが署内にもいて情報かく乱してたじゃん。まいったよねー俺の隣の奴もそうだったんだよ。どうすんのこれ?って、みんな平静装っても内心は世界の終わりって感じだよね。あんときナカムラさんが機転利かしてナミコシの感化受けてない昔の同僚呼び寄せてなかったら今ここまで回復できてたかもわからないよ。」

「二十面相のシンパが署内からもう一掃できたかって?そりゃもう大丈夫だよ…って言いたいけど、どうかな。だってあの日以前はきちんと仕事してて問題児でも何でもなかったからねナミコシのシンパたち。…え?カガミ君にもシンパいたのかって?まさかね。だってミナミ検死官には自殺のための毒薬差し入れたシンパがいたらしいけど、彼の周辺も彼自身も原初が大騒ぎしている最中も実に静かなもんだったらしいよ。」

「カガミってさ、無駄口きかないし署を出た後も聞き込みや調べ物で真面目なのはいいけど以前から根つめすぎだったよね。だから二十面相事件追ってる時もいつも通り体に無理して仕事に打ち込んでるようにしか見えなくってさ、まして妹さんが亡くなったばかりだから仕事してたほうが気がまぎれるのかなってみんなも思ってたくらいで。ナカムラさんだけはとても気にかけてたようだけどあの時はカガミの方が上司だしさ、結局そっとしとく以上の事は出来ないよな。仕方ないけどさ、カガミってほんと孤独な奴だよなあ」

「さあな、俺はカガミもミナミも、原初のシンパの一人だと思ってたし。そもそも、俺達には何も知らされないんだよ。ある日、どこで入手したのか自分のケータイやスマホにメールが来る。不思議なんだよね、誰も通報しないんだ。いや、通報しないやつを選んで送信するのか。それまでこちらからは一度もアクセスしたことないのにさ。で、支持されたところに出向くと原初本人がいるんだ。びっくりしたよな、対応も丁寧で。まあ、いいやつなんだよ。カガミは、原初に会わなかったのかな。なんであのタイミングで奴が二十面相になったんだか、俺にも分からないよ。まあ暗黒星のお告げってやつ?」

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新宿の時計塔から原初二十面相のナミコシが投身し、落下地点と思しき場所には血液一滴の痕跡も残さず失踪、その後何の情報も囁かれるこもなく、被害者も加害者も傍観者も取り残されたまま時は過ぎた。アケチ探偵によって暗黒星は封印されたとされているが、伝説は独り歩きを続けている。

後ろ暗いことがある人間は、深夜新宿のガード下を通ってはいけない。そこには未だに枷から解き放たれた「蝶」が待ち受けているから。