zencro’s diary

乱歩奇譚SSと雑記

ホットケーキ


「アケチ先輩って、料理得意なんですよね。なにか作ってくれませんかー?」
「誰から聞いた」
「カガミさんですが」
「う、言ってはまずい事だったか、アケチ君?」
「まあまあ、探偵さんそんなに睨み据えたら警視びびっちゃいますよ?悪口じゃなく褒めてんだし、おさえておさえてー」
「警察がロクな事件を持ち込んでこないからヒマを持て余して自炊してただけだ。人に出すために覚えたんじゃない」
「でもぼくおなか空きましたよぉアケチ先輩ー」
「帰れ」
「おじゃまします、アケチさん。ナカムラさん、カガミさん、こんにちは」
「おそいよハシバ君ー」
ブルーシールのアイスクリーム買ってきてほしいって送信してきたのコバヤシだろ。人数分同じ種類は無かったから、いっそ全部違うフレーバーにしてみたぞ」
「わーいありがとうハシバ君!アケチ先輩、じゃあホットケーキ焼いてくれませんか?アイス上にのっけて食べてみたいです!」
「さっさとアイスだけ食って帰れ」
「そんなこと言ってー。先輩の好きなウベあげませんよー?」
「……」

「(あれ、探偵さんどしたの?厨房入ってったけど、ホントに作ってくれるの?)」
「(ふふ、先輩ウベが大好物なんですよー。でも自分では意地でも買いに行きませんけど)」
「おいコバヤシ、ひそひそ話は感心しないぞ」
「はは、ほらコバヤシ君彼氏が妬いてるよー」
「ナカムラさん、人をからかうのは私も感心しません」
「はーい」
「はいはい警視」
「ハイは一度でいいです」
「お、いい匂いがしてきましたよぉ~」
「おい、皿ならべろ」
「さすが先輩、美味しそうです!」
「お世辞はいい。さっさとナイフとフォークも用意しろ。ハシバはストレージからコーヒー持って来い」
「あ、はい」
「はー、うまいもんだねえ~、次々ポンポンできあがっていくよ」
「彼の作る料理はうまいですよ」
「おや初耳ですねえ。わたしに内緒で探偵さんの手料理たべてたんですか警視?」
「打ち合わせで外出する暇もない時に手早く用意してくれるんです。そのうち妹からクレームがついたので、夜は早々に引き上げるようになりましたが」
「(シスコンめ)」
「君たちいま何か言ったか?……ナカムラさんまで一緒になって何ですか!」
「おっとっと、さあ諸君せっかくの探偵さんお手製ホットケーキだ、冷めないうちいただこう!」
「はーい!」「「「いただきます」」」
「あーコバヤシ君、メープルシロップとってもらえる?」
「……わあ、いっぱいかけるんですねえナカムラさん」
「甘いものはしっかり甘くね!ホットケーキにはやっぱりメープルシロップつゆだくでしょおー」
「ナカムラさんは甘味も酒もいけるんですね」
「ハシバ君はアイスどれ食べる?僕は沖縄田芋チーズケーキがいいなあ」

「じゃ、探偵さん、ごちそうさまー。コバヤシ君にハシバ君、暗くならないうち早めに帰るんだよ」
バタン
「ナカムラさんもカガミさんも、ホットケーキ好きだなんて意外だったなあ」
「でも僕らだって、おとなになっても好きだよきっと」

「はー、口の中がまだ甘ったるいよ~。警視、署に戻った後で口直しに飲みに行きません?」
「ナカムラさん」
「はい?え、けいし」
「……ほんとですね、まだメープルシロップの味がします」
「」
「そうですね、どこ行きましょうか。ナカムラさんのお宅に伺ってもいいですか?途中でお酒と何かつまみ仕入れて。」
「ええっと……カガミちゃ…あ、いや警視、んんっ……」
「カガミちゃんで、いいですよ」
「……まいったなあもう」

続き。

「アケチ先輩は、どうしてカガミさんを連絡係に指名したんですか?」
「なんだ今さら」
「カガミさんて立派な刑事さんだし先輩が白羽の矢を立てるの分かりますけど」
「ふん」
「でも、ナカムラさんもいましたよね。カガミさんに決定した理由って何でしょう」
「べつにー カガミなら裏もなさそうだし扱いやすいと思っただけだ」
「ナカムラさんは?」
「あいつは胡散臭すぎるだろ」
「はぁ、なるほど」
「おいおいちょっと、ふたりともわたしへのフォロー無しぃ?ひっどいなー」
「あれ、ナカムラさんいつからそこに?」
「一応チャイム鳴らしたんだよーでも応答無いし、ノブ回したら開くし」
「ああ、チャイムなら故障中だ」
「ええ?!探偵業やってるのにそれダメなんじゃない?客帰っちゃうじゃない」
「ぼくもそう思うんですが先輩が業者呼ぶの嫌がるんですよー、ひとみしりだから」
「おい、失礼なことを言うな」
「あ、いまの口調カガミさんみたいですね」
「うるさい」
「まあまあ、探偵さんもまだ十代だしいろいろあるよねー」
「お前もいいかげんなことを言うな」
「だいじょうぶでしょ、チャイム修理なら入口辺りで作業するだけだし部屋の奥にまで入ってこないから。とっとと直しちゃいなよ」
「そうですよ先輩、お客さんが来ないとぼく退屈です」
「おまえの退屈を晴らすために探偵やってるんじゃないぞ、帰れ」
「ハシバ君も財閥跡取りの勉強で最近あまり遊んでくれないし」
「おや、君の事に関してはあんなに過保護だったハシバ君がねえ」
「ナカムラさんも二十面相後はほとんど事件持ってきてくれなくなったし」
「あははー平和がいちばんでしょ、コバヤシ君」
「んーもぅ、みんな落ち着いちゃってつまらないなあー」
「そうだな」
「へ?」
「確かに最近頭を使うほどの事件が無い。おいナカムラ、今日は何か面白い話でも持ってきたか」
「もー探偵さんも不謹慎だなあ、しがない連絡係にあんまり期待しすぎないでよー来づらくなっちゃうじゃない」
「大した用件も無いのにわざわざ階段上ってここに来るほどヒマなのか刑事は」
「あーそうそう、いいかげんエレベータ直してくんないかなあ、けっこう慣れたつもりだけどまだキツイんだよー」
「そうだ、パーティーしましょう」
「え、なんの?」
「アリスであるじゃないですか、なんでもない日、おめでとう!…って」
「ばかばかしい」
「先輩も参加してくださいよーほら、この間みたいにホットケーキでいいです!今まで食べた中でいちばんおいしかったし」
「オレがそう何度も言うこときいてやると思うのか?」
「えぇー」
「あー、あのさぁ探偵さん」
「何だ」
「えーとね、」
「なんだ、さっさと言え」
「…その、ホットケーキさ、よかったら作ってくれないかなー カガミがさ、あいつ好物だったみたいでね、前に作ってもらって嬉しかったみたいでさ、たびたび話題に出してたんだよね。君のホットケーキ」
「あいつが?」
「うん。持ってってやりたいんだよ、探偵さんが作ったホットケーキ」
「…持っていく間に冷めちまうだろどうせ」
「ま、そうだけど、ね…でも」
「フン」
「先輩、こんなこともあろうかと、ぼく材料買いそろえておきましたー!」
「やるねえコバヤシ君。あ、わたしも手伝うよ」


カガミのために、もう一枚。

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