zencro’s diary

乱歩奇譚SSと雑記

呑みに行きましょうカガミちゃん


「なんか蒸し暑いなあ」
「最近急に気温が上がりましたよね」
「カッと暑くなるわけでもなく、うすらぼんやりとした暑さってのは好きじゃないんだよね。」
「剣道をしていると並の暑さは平気になってくるものですけど、確かにこのはっきりしない感じは慣れませんね」
「あー、くさくさするねえ。カガミくん、ちょっと行っちゃう?」
「ナカムラさん、まだ勤務中ですよ」
「わかってるって、でももう外回りでやるこたやっちゃったじゃない。早じまいして暑気払いしにいこうよお」
「仕方ありませんね、今日だけですよ?」
「おっ、話がわかるねー、そうそうゆるーく行くのも大事だよねえ」
「……連絡終わりました。どちらへ行きます?」
「こないだ見かけてちょっと気になってたとこあるんだよね、良ければそこ付き合ってよ」

「ここは飲み屋というより酒屋さんではないですか?」
「そうそう、そうなんだけどさ、たまにちょっと呑ませてくれるとこもあるのよ。ほら、商品並んだ店内のレジ挟んだ裏側にカウンターみたいなのあるでしょ?」
「ああ、最初暗くてよく見えなかったんですがひとりふたり居ますね」
「椅子は無いから、コップ酒とか瓶ビール、それと缶詰や乾きもののつまみだしてもらってさ、ささっとつまんでちょちょっと飲んで、口うるさい家族から一時逃れて自分の時間を作ってる、そんなおっさんたちに紛れて飲むのって結構好きなんだなーカガミくんもさ、たまにはこんなしみったれた呑み方するのもオツなもんよ」
「ナっ、ナカムラさん聞こえますよ?」
「おいコラしみったれたとはなんだい聞き捨てならねえな」「ごめんごめん、一杯おごるからゆるして、ね、ね」「ふん、そんな背広なんぞ着やがっておまえいっつも暑っ苦しいんだよー」「まま、どーぞどーぞ」

「さて、とりあえず中びんとコップふたつねー、あと缶詰、イワシのと、あとツブ貝のある?あどーもども」
「じゃ、カガミくんおつかれさまー」
「お疲れさまです、ナカムラさん」
「絡む上司や生意気な部下からも離れ、ひとり自分の時間をツブ貝とともに噛みしめる…カガミくんもさ、たまにはむりやり付き合わせるワタシみたいな先輩から逃げて、お気に入りの場所を作っとくと後が楽だよー」
「いや、わたしはひとりではそんなに飲まないですし」
「あー、呑む量は関係ないよー、たまーに一人の時間持つようにしたらいいって事だよ、気を張りつめ過ぎないようにさ」

と言うものの、最近はカガミくん以外とは呑みたいと思わなくなってきているナカムラさんと、ナカムラさんと呑むようになってから酒の味がわかるようになってきたカガミくんなのでした。