zencro’s diary

乱歩奇譚SS

あらしのひるに


青天霹靂、いきなりの暴風雨で慌てて雨戸を閉めた。
階下の大家の鉢植え類を中に入れたり、大家んちの雨戸も閉めたり、とりあえずひと段落してからだ拭いて、ちゃぶ台のある6畳部屋で熱いホージ茶もらってる。今日のお茶うけは蕎麦ぼうろか。

「あんたがこないだ意中の人って言い張ってた人なんだけどさ」
「うん」
「なんかデジャブー?みたいな気がしてね、何だろう誰だろうってずっと引っ掛かってたんだけどね」
「うん?」
「あんたのお爺さんの事じゃないのかって」
「!?!??」
「小さい頃一緒に住んでたじゃん。憶えてるでしょ」
「いやあそりゃ憶えてるけどさ、じいちゃんだもん」
「背ぇ高いし年とってる割にウチの猫がにぼしの袋くわえてダッシュしてったの追っかけてすぐ捕まえたほど足早かったし」
「あー」
「剣道師範とかじゃなかったっけ」
「だったっけ」
「人の目まっすぐ見ながら話すしね」
「確かに」
「小さい頃のあんたも、対抗意識燃やしてお爺さんの目を睨み付けるから殺気漂うにらめっこみたいで」
「じいちゃんと孫でなんで殺気漂うのよ」
「なんかふたりとも意地張ってぜんぜん目線外そうとしないんだもん」
「そういえば俺が泣かされて終わった様な…」
「泣くまいと必死で顔しかめて真っ赤になってすごい顔だったよねー」
「孫相手にめちゃめちゃおとなげないじゃん俺のじいちゃん」
「だよねー」
「ねー」
「それで撮ったのがこの写真なのよ」
「ちょ、いつの間に!」
「あの頃スマホあったらもっといっぱい面白写真が撮れたんだけどねえ」
「やめて」
「でさ、お爺さん、娘…あんたのお母さんね、怒られてねえ」
「ほぉ」
「見下ろすくらいに背の違う娘に怒られて、まるで飼い主に叱られた犬みたいにうなだれてねえ」
「うっわかっこ悪っ」
「お爺さん、あの歳で茶色いくせっ毛でほんとワンコみたいで」
「うん?」
「娘のあんたのお母さんは直毛のボブで、あんまり似ない親子だったよねえそういえば」
「うん...」
「でもさ、仲良い親子だったのよねー」
「俺が12の時だっけ、卒中で死んだの」
「そのくらいだったかねえ。で、あんたのお母さんもそのあと急に元気なくなっちゃって、数年であと追うように亡くなったね。あんがい今頃生まれ変わって仲良くやってんのかもしんないね。…あれっ何の話してたんだっけ?」
「俺の好きな人がじいちゃんに似てるって話」
「あぁーそーだったそーだった!でもあとは何だっけ、正義感はまあ強かったけど、料理はあんたに似てけっこう器用に作ってたしおとな気は無いけど別に喧嘩っ早くはないし、思ったほど似てないかね」
「…そうさのう」
「なによその相づち」
「おばちゃん、お茶おかわり―」
「ったくもうーはいはい」

ああ、まだまだ風強いなあ。
もうちょい長居して昔のアルバム見せてもらおっかなあ。