zencro’s diary

乱歩奇譚SS

初詣


今年の元旦は自宅で過ごせることになっていたのでゆっくり寝ていようと思っていたら携帯が鳴った。やれやれと思って画面を見たら"コバヤシ"。ありゃー探偵さんの呼び出しかあ。「はいはいなんでしょう?」「明けましておめでとうございまーす。ナカムラさん、非番ですよね?初詣行きませんかー?」「いや私は自宅待機ですから家で寝」「もうそちらへ向かってますので、あと30分ほどで伺いますね〜」プツッ。
ひとの話聞いてねー。布団の中で天井を仰ぎ嘆息する。「はぁぁ、さよなら寝正月…」のんびりしちゃいられない。子どもらが来る前に身支度しなきゃ。
ぴったり30分後。ピンポーン♫「おはようございます、ナカムラさん!」「はいコバヤシ君おはようさん。おや、ハシバ君、アケチ君もお出迎えご苦労様であります!」と軽く敬礼して見せる。
「明けましておめでとうございます、ナカムラさん。お休みのところすみません、コバヤシがアケチさんとナカムラさんも誘うって強引に…」「ナカムラさん、背広ネクタイで行くんですか?」「靴はスニーカーだよ?」「それっていつも通りじゃないですか。」「よそに着ていける服なんてしばらく出してないし面倒くさくってねー。君らだってそうじゃない」「ぼくらは外出する時も制服かそれに準じる服装って校則で決められてますから。」そう言えばコバヤシ君が女装した時以外は制服だったっけ?
「よっ、探偵さんもあけおめことよろっ!」「いい年して何がアケオメだ。正月なんて別にめでたくもない、街はやかましくて頭痛もひどいし」こいつは相変わらず仏頂面で愛想無いなあ。コバヤシ君もよく連れ出せたもんだ。
参拝する神社には別段こだわりは無く、一番寝汚そうな俺んちの近所にしておけば時間のロスが少ないというアケチ君の案らしい。そこで、俺が行きつけの、と言っても年一回行くか行かないかだけど、神社へ案内する。
ごく近所の人間しか来ないような地味ーな神社だ。鈴をガラガラ鳴らし賽銭を入れ二礼二拍手一礼すると、お雛さまみたいな二人が並んで後に続く。アケチ君はそっぽを向いてて、やる気はないようだ。
「ハシバ君、おみくじひこうよ」コバヤシ君が誘いさっそく二人が引いたおみくじを開いている。「…アケチ君、私らも引いてみようか?」手持ち無沙汰に、ポロっと誘いの言葉が出た。「やらん」あ、やっぱねー。でもさ、「ちょいと変わった視点が見つかるかもよ?いつもの缶コーヒーの代わりっていうのも変だけどさあ」と言うと、彼は反論するのも面倒と思ったのか100円を落とし雑に御籤箱の中からひとつつまみ上げた。ほほおと意外に思いながら俺も100円。
「アケチ先輩、ぼく大吉でした、ハシバ君は大凶だって!大凶なんて本当にあるんですね、ハシバ君すごいじゃない、それってきっと激レアだよ、良いなあ〜「アケチ先輩は、どうでした?」「…さあ、どうだろうな」「ええ〜ケチだなあ、教えてくれても良いじゃないですかハシバ君なんて大凶ですよ大凶〜「おいコバヤシぃ〜そう連呼するなよぉ〜」ひらひらおみくじ2つを振り回すコバヤシ君と、情け無い声で追いすがるハシバ君を眺めながら、「で、如何だったの?」と聞いてみる。「言わないほうが良いって聞いたことがあるぞ」ああ、きっと良いことが書いてあったんだな。どれ俺も。…ふーん。
「そうだ。ナカムラさん、ナカムラさんはどうだったんです?」おっとこっちにお鉢が回ってきたか。「さあね〜ヒ・ミ・ツ。教えな〜い。「えーっ!ナカムラさんまでぇ?大人気ないなあ二人とも」ホント、その通りだね。
「しょうがないなあ、じゃあ気が変わったら教えてくださいね。」パッと神さまも恋におちそうな笑顔を振りまいて、少年は追っ手の友人の手をすり抜けながら神社の階段を駆け降りていく。
「ねえ、コバヤシ君ずいぶん優しい子になったねえ。」一人ぼっちになった俺たちを、誘い出してくれたりさあ。
「ふん」じゃれ合う彼等を見ながら探偵さんが鼻を鳴らす。

運勢:吉
願望(ねがいごと):
心長くして騒がねば時いたりて叶う

カガミ、今年もよろしくな。