zencro’s diary

乱歩奇譚SS

仮面


人は今迄生活してきた世界とつながりを持つ限り、その世界のルールに従わなければならない。だがまた人は仮面をつければ世界との連携を絶ち、所属する世界のルールに縛られず、心のまま振る舞う事ができる。仮面は、様々なしがらみから自由になれる魔の装置だ。正義の味方も悪の手先も、世界のルールを逸脱して己のルールに従う時はいつもその顔には仮面がある。俺に仮面を、そして奴等に死を。一度つけたら二度と外せない魔性の仮面。俺を抑えていてくれた彼の人からも、その非力で鈍重ですらある薄い身体で束縛を破ろうとする俺を必死で抑え続けてくれた彼の人からも、仮面をつければ俺はいとも容易く逃げ出せる。拍子抜けするほど簡単に、彼を裏切ることもできる。かつて聞いた童話の、足を切り落とすまでステップを踏み続ける靴のように、つぎつぎ標的を見付けては息つく暇も無く殺し続ける。頭を切り落とされるその時まで。