zencro’s diary

乱歩奇譚SSと雑記

ナカムラ

「や、こんばんは」 「ナカムラさん?なぜここに?」「警視こそ、おうちに帰らずなぜここに?」「すみませんナカムラさん、私はこれから用があるので」「つれないなあ、一緒に行こうよ」「だめです」「どうして?」「どうしてもです」「おれのいうこと何でも…

協力要請

「なんで睡眠薬と頭痛薬ひっきりなしに飲むの?体に良くないよー成長期なのに」 「何だいきなり」 「わざわざ海外から取り寄せてんでしょ。飲み方だってさ、いっつも噛み砕いちゃって、しかも缶コーヒーなんかで流しこんでー。飲み合わせとかさ、よくないん…

喪失

「警視そこ危ないですよ、…って、ああ〜」ナカムラが指摘した直後、かしいだ棚の書類は雪崩のようにカガミの頭上から降り注ぐ。 「大丈夫ですかぁ警視?」 「は、はい。少し驚きました」 床に尻もちをつき、ふるふる頭を振りながら返事をするカガミ。そこへ…

現二十面相逮捕直前

「ナカムラ、お前も来るか?」 探偵さんはそう言っておれに目を向ける。 「いっやあ、おれが動いて、万一あいつに気付かれでもしたらマズイっしょ。それにさ、ヘタすりゃおれだって怪しまれる立場だもんね共犯として。仕事でこれだけつるんでたんだから疑わ…

愛してる/愛してない

「ナカムラさん、私を愛してますか?」「なんだよ急に」 「私は、ナカムラさんを愛しています」 「……ありがと」 「いや、お礼ではなく」 「今後ともよろしく」 「あいさつでもありません!」 「なんだってのよ」 「ナカムラさんからも、愛してると言ってほし…

告白

カガミは一般人相手だと、どうも歯切れが悪くなるらしい。今日も、地取りでG街を回っている時に妙な絡まれ方をしてこちらに救いを求めるような顔を向けてきた。で、おれが間に入ってその場を収めたのだけど。 「ねえ、どうしてそう弱腰になるのさ?ささっと…

訪問者

波の音を覆う程、飛び交ううみねこが姦しい。 それでも、ざしゅ、ざしゅ、砂を踏む足音が、次第に此方へ近づいて来るのが聞こえてきた。「やっぱり来たねえ、探偵さん」 眺めていた沖から頭上へ目を移しナカムラは言った。 「やっと、というべきかなあ」 「…

日常

[1]「ねえ、カガミく-ん」 デスクで入力作業をしているカガミの背後から、突然ナカムラが抱きついた。 「!?」 一瞬、何が起こったか理解できず硬直するカガミ。 「なっ、なななんですか?!」 首に回した腕をゆさゆさ揺さぶりながら、無精髭の生えた頰…

終幕

一連の二十面相騒動も、ナミコシの遺骸の発見でようやく真の終息をみた。 最後に逮捕された元シンパの女性宅で植物状態の彼が発見され、移送される途中で車ごと行方が分からなくなったと思ったら、取り壊し寸前の倉庫内で何者かに腹部を刺された状態で再発見…

よふけ

ふと目が覚めた。なんか、夢を見てた。 やたら喉が渇いて、やれやれと起き上がりトイレで用足しのあと、冷蔵庫からペットボトルを引き出し飲んだ。喉がカラカラすぎて、水が通ってゆくのが痛いくらいだったが構わずごぶりと飲み込んだ。 「……ふぃー」思わず…

面会続々

1「俺に気遣いはしなくていいですよ」地下へ行く度お前が言う。 おれが会いたくて来てるんだ、 何度言っても信じない。 自分には価値が無いと結論付けて、 茫洋とした眼にはおれが映っているのかどうかも分からない。そしておれは地上に戻り 囚人のように仕…

「コーヒー入ったよ」 「ありがとうございます」 水の匂いが満ちる室内に、ふうっと芳香が漂ってきた。 「雨だねえ」 「雨ですねえ」 ちゃぶ台の上に置かれたカップを手に取りひと口含む。 「……美味いなぁ」 「はい」 ナカムラはカップを持ったまま、畳の上…

鑑賞

「こないだ見た映画ですけど」 「うん」 「年上の女の子のベッドにもぐりこんだ男の子が」 「あー、男の子は成長止まってて見てくれは幼いけど実年齢は女の子と同じだからね?」 「ああ、そうでした。で、彼女のむきだしのへそにパウダーふりかけて」 「おま…

花火

「カガミさーん、こっちですよー」 「あ、ナカムラさんもいるな。あたま一つ分低いから分かんなかったな」 「やあコバヤシ君、流石に混んでるね」 「ここからだと割とよく見えますからねー両側の街灯がちょっと邪魔ですけど」 「だから有料席で見ればいいと…

疑惑

「あー、ついに降ってきましたねえ」 「ええ、駅まで急ぎましょうか」 築地署まで出向いて用を終えた後、外へ出たらポツポツと落ちてきた。 急いで手近の地下鉄入口へ入り、ふうと一息ついたら背後にものすごい雨音。 「ひゃあ間一髪だったねえ」 「うわ、す…

完成

「……ここは」「お、お目覚めかな?」 見回すとぐるりはコンクリートの壁だった。見上げると高い天井にはむき出しの配管。 どこかの古い倉庫跡か何かのようだ。 声の主は、壁の天井近くにはめ殺しになった窓から漏れる陽光を背に、不自然なほど距離を置いて立…

改変

カガミが横に居ない。 俺は、必死になってカガミの姿を捜す。 「カガミ、カガミ」 居ないことが致命的な事実に思えて仕方がなく、他の何にも目をくれずカガミを捜し続けた。 「カガミ、何処だ?」 やがて俺は、はたと立ち止まり思った。 「カガミって、誰だ…

朧月夜の後日譚

1. 「ナカムラさん、ちょっといいですか?」 会議室から退出する際、カガミが声をかけてきた。他の署員がみな退出した後、俺とカガミだけになると、カガミがいきなり頭を下げた。 「この間、宴席では失礼しました!」 あれ?憶えてたの? 「酔っていたとはい…

ホットケーキ

「アケチ先輩って、料理得意なんですよね。なにか作ってくれませんかー?」 「誰から聞いた」 「カガミさんですが」 「う、言ってはまずい事だったか、アケチ君?」 「まあまあ、探偵さんそんなに睨み据えたら警視びびっちゃいますよ?悪口じゃなく褒めてん…

フールズ

僕らは、両親が死んでからの6年を二人きりで過ごしてた。たった6年。 その6年が、あんなふうに終わるなんて思わなかった。房で独りで過ごすなか僕は、どうしても「もしも」の世界を思ってしまう。 もしも、あのとき約束通り早く家に帰っていたら。 もしも…

朝食

夢から醒めきっていないのか寝足りないのか。 なんだか、ふわふわとした心持ちだなあ…… そう思いながら、いつものように台所に立った。 そうだ冷凍庫にシャケの切り身残ってたな、そのまま焼いちゃえーとグリルに投入。 茄子とネギと油揚げで味噌汁にしよう…

受容

「ナカムラさん、俺の身柄を引き受けたこと、後悔してませんか?」俺の顔をまっすぐ見下ろす汗ばんだ顔が、外から微かに漏れる月明かりでぼうっと光ってる。 「なんで、いまさら?」 見上げて、もうとっくに憶え込んだ台本を読むように答えた。 「後悔なら、…

痕・風邪

痕「はぁー、風呂っていいよねえー。最近はめんどくさくてシャワーばっかだったけどさ、たまには湯船につからないと体がほぐれなくなっちゃうよなあ」 湯気のこもる浴室で、誰に言うともなく大きな声で独り言を言う。 「風呂は命の洗濯ってねえー」 湯船に寝…

補給

「あー腹減ったなーなんか無いかなあ」 冷蔵庫を開けて、物色する。まずカレーのルーだとかマーガリン、紅生姜やラッキョが視界に飛び込んできた。うわぁ、いつ買ったやつだっけこれ。すぐ食えるもんは…っと、あったあった!魚肉ソーセージ。賞味期限3日過ぎ…

面会続

1「や、カガミ。元気してる?」 「ナカムラさん、そう俺のためにあなたの貴重な時間を割かないでください」 「そんなこというなよー、いいじゃん、どうせ職場の真下なんだしさぁ。それに、俺こう見えて結構マジメなのよ?ちゃんと職務に励んでるから安心し…

伝言

出所以来、ナカムラさんのアパートに厄介になっている。逮捕前に住んでいた部屋は、煩わせて申し訳ないと思ったが、ナカムラさんに頼んで処分してもらっていた。犯罪行為を続けていた忌まわしい場所にのこのこ戻れるわけもなく、またそのまま放置していても…

朧月夜

「眠れないなぁ」 ナカムラは前髪に隠れた目をパッと開いて呟いた。深夜帰宅して食事も風呂もそこそこに布団にもぐりこんだが一向に寝付けない。 もう5月だというのに足先は冷え切っていくら布団にくるまっても血が巡らず、頭は芯から疲れ切って鉛のように…

マニアの受難

「ねえ見てよー 検屍結果報告ん時の決めポーズ、こっちと……、こっち、どっちが良いー?」 「あのさ、いっつも思うんだけど何でそんな振り付けが要るの?フツーに淡々と説明すりゃいーじゃない、疲れるでしょ?」 俺は腕を枕にごろんと横になりながら、小さい…

草上の昼食

「ナカムラさん、今度の週末おたがい非番ですよね」 「うんそうだねえ、ひさびさゆっくりできてうれしいねぇ」 「あの、ナカムラさんがよければ、付き合って欲しい所があるんですが」 「へえぇ、カガミくんがそんなこと言うなんて珍しいね、どこなの?」 「…

呑みに行きましょうカガミちゃん

「なんか蒸し暑いなあ」 「最近急に気温が上がりましたよね」 「カッと暑くなるわけでもなく、うすらぼんやりとした暑さってのは好きじゃないんだよね。」 「剣道をしていると並の暑さは平気になってくるものですけど、確かにこのはっきりしない感じは慣れま…