読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

zencro’s diary

乱歩奇譚SS

ドレス

カガミが釈放された。 出所の日、外で出迎えたナカムラは、しかし彼の様子がおかしいと勘づいた。 出所時の手続きも受け答えもちゃんとこなしていたのだが、何かがおかしい。 それは、馴染みの探偵事務所の連中も察したようだった。 それでも、その日は何か…

6月のおもいで

「ナカムラさんいらっしゃいますか?……あれ、ここにもいない」 「なんだぁ、お前がここに顔出すって珍しいなカガミ」 換気レベルを最大にしてもなお視界が良くない部屋の中から声がする。 「一課にも姿が見えませんし、出かけるという報告もないんですよ。ご…

去日

どの位こうしていたんだろう。 六畳間に猫背で胡坐をかき、頭の奥でシーンという音を感じながらぼうっとしていたら、窓の外は夕焼けから夜空になってた。どのくらい一緒に居たっけ。ほんの数年なんだよなあ。「ちゃん」、から初手柄で「くん」呼びになるのは…

バレンタイン

ナカムラが待機する車に、カガミがドアを開け助手席に座った。 「あー警視、明日の捜査ですがね、…え?」 車を出そうとするナカムラの手を遮り、カガミがキーを戻した。 「えっ?何なに、なんなの?」 「もう、いいかげんにしませんか」 いつもの穏やかな口…

眼鏡 続

「や、また来たよー」入って来たナカムラが腕を組んだまま頭を傾ける。「すみません、いつも気にかけていただいて」「 いっやーおれの方こそ度々呼び出してごめんな。カガミが地下にいると思うとついつい足が向いちゃうんだよねえ」すっかり面会室にも馴染ん…

眼鏡

サザンテラスでの一件がひと段落ついて、カガミが漸くおれの話にぽつぽつと返事をするようになってきた頃、収監されて以来初めて、カガミの方から突然切り出した。「ナカムラさん、あの」「ん、何?」おれはちょっとびっくりして、でも努めて顔に出ないよう…