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zencro’s diary

乱歩奇譚SSと雑記

おやつ

「こんにちはセンパイ」「おじゃまします」
「またお前らか。今日は眠い、帰れ」
「ハシバ君がアップルパイ持ってきてくれたんですよ、みんなで食べましょう」
「人の話聞いてるか」
「だって、ハシバ君のお母さんのお手製ですよ?フィリングだって、財閥の経営する農場で採れたリンゴ使ってるんですって。おいしそうですよー。ハシバ君、ぼくおさらとナイフとフォーク並べるから、缶コーヒー4つもってきて」
「あ、ああ」とカウンター下の収納場所へ向かうハシバ。
「……4つ?」
「上がらせてもらってるよー探偵さん」
「お前もいたのか」
「ビルの入り口でナカムラさんに会ったんですよ、4人の方が切り分けやすいですし、良かったですね」
「だからオレは寝るところだって言っているだろ。ここはカフェじゃないんだ、帰れ」
「そんなこと言ってー。センパイのって、寝る寝るサギじゃないですか。どうせ眠れないんだから、諦めて食べちゃった方が良いですよ」
「相変わらず押しが強いねー、コバヤシ君」無精ひげを撫でながらナカムラが感嘆して言う。
「ったく……お前ら、靴は脱いだんだろうな?」アケチがめんどくさそうに起き上がった。
「おいハシバ、コーヒーはいいから湯を沸かせ」
「え、アケチさんコーヒー以外のもの飲むんですか?」
「アップルパイなら紅茶がいいだろ」
「ええっ、ここに紅茶の葉なんてあったんですか!?」
「ティーバッグだ。いやなら飲むな」
ナカムラは先ほどまでアケチが寝そべっていたソファに収まり、ニヤニヤしながら子ども達のやり取りを眺めていた。
「探偵さーん、わたしは生クリーム添えが好きなんd」「黙れ」

「ナカムラさんって、見かけによらず甘いもの好きですよね。お酒のおつまみ作るの上手いって聞いたことありますけど、もしかしてケーキとかも作れるんですか?」
「いやー、食べるのは好きだけど作るのはちょっとね。サテンでバイトしてたから甘いソフトドリンク系は作れるけど」
「極度の猫背でよく勤められたな」カップに湯を注ぎながらアケチが憎まれ口をたたく。
「やっだなあ、わたしだって探偵さんくらいの歳の頃は背筋もまっすぐだったのよー?」
「でもぼく、ナカムラさんが姿勢正しいとこ見た事無いです。いつそんな姿になり果てたんですか?」
「おい失礼だぞコバヤシ」
「あはは、いいよいいよ。うーん、そうだなあ、取り調べの時の姿勢が体に染みついちゃったかなあ」
「あー、机に肘ついて前のめりになってる姿から、机と椅子取り払うといつものナカムラさんの立ち姿になりますねえ、なるほど腑に落ちました」
「お、おれも……」コバヤシの返答に思わずつられるハシバ。
「おい、できたぞ。ナカムラ、する事無いんならパイを切れ」
「あ、僕がやります。母がケーキ作るときは僕がカットする役目でしたから」

「わ、美味しいよハシバ君。お母さん、すごいね」
「へえー、りんごの甘さと酸味が丁度いいねえ、うまいうまい」
「よかったです、母も喜びます」照れながらも頬が少し上気して嬉しそうなハシバ。
「ハシバ君も、ケーキ作れるんだよね」
「ほう」
「甘いものが好きなら、自分で満足いくものを作れるようになれ、と言われて」
「なるほど、自分で料理できれば敵に毒殺される気遣いもないしな、ハシバ財閥御曹司の自衛の一つか」
「どっ、毒殺……」と、今度は青ざめるハシバ。
「ハハハ、いやーそりゃ純粋に坊ちゃんがずっと好きなものを食べられるようにって母心でしょー。いいお母さんだよねぇ」
「坊ちゃんはもうよして下さいよ……でも、ありがとうございます」

「あれ?ハシバ君、一切れ余ってるよ、どうして?」
「ああそうだ、ナカムラさん、これカガミさんに差し入れてもらえませんか。カガミさんも甘いもの好きみたいでしたし。収監されていると、甘党でなくても甘いものが無性に恋しくなるって聞きました。よければ、是非」
ハシバが手際よく包んだ最後の一切れを受け取り、ナカムラは顔をほころばせる。
「いやぁ、こりゃ有難いなあ。あいつ何かと差し入れとか辞退しがちだけど、これは必ず渡すよ。ありがとう、ハシバぼ……ハシバ君」

こりゃ絶対カガミに食わせないとなぁ。
また照れて赤くなる少年を前にして、ナカムラは思った。

今週のお題「おやつ」
お気に入りのおやつは成長とともに変わってきたなー
年がら年中は食べられないけれどおやつマイブームは…
高校生の時はあんみつで、大学生の時はアップルパイ。就職して早々はクリームソーダ、やがてチョコレート。明治のハイミルクがあれば、チョコレート欲は満たされる。常備食である。

酒宴

「警視の髪ってクセがありますよねえ。ガッコとかで先生に目ェつけられたりとかしませんでした?」
アルコールが入って普段より気安さが増した気配のナカムラが、カガミの頭を弄っている。
「ええ、それに髪の色も薄いので染めてるのかと言われてましたね。親がまだ存命中で私と同じ髪質だったので、疑いは晴れましたが」
こちらも酔いが回り警戒心も薄れたのだろうか、髪を弄び続けるナカムラの手を逃れようともしない。カガミはカウンターに置かれた琥珀色の液体を見つめながら、昔の事を思い出していた。
「実は小学生の頃、そうとは知らずに酒を飲まされた事がありました。はっきりと覚えていませんが、おそらくウィスキーだったと思います」
「そりゃ、あぶないなあ。ご両親と飲み食いしてて、ジュースか何かだと勘違いしちゃいました?」
「近所の土手で大人…大学生あたりだったんでしょうが、たむろしていて、私がボールを追って側に行ったときに紙コップを渡されたんです」
ナカムラの手が止まった。「たち悪いなあ……それで?」
「さすがに一寸口にしてすぐやめました、不味くて」
「そりゃそうだ。しかし許しがたい奴らだな、悪ふざけが過ぎる」
ナカムラの顔がいつになく強張っているのを見て、カガミがふわりと笑う。「おや、ナカムラさん怒ってます?大丈夫ですよ、無事家に帰りましたから」
「そりゃ許せないでしょ。わかっててこどもに、しかもこんな度数の強い酒を寄越すなんて」
「こどもはアルコール耐性が弱いですからね」グラスを飲み干すわけでもなく、店の照明でカウンターに映る琥珀色の影を見つめながら、さらにカガミは愉快そうに言った。「でもナカムラさん。現在の私も、強くはありませんよ」
カウンターに置いた腕を枕に、ナカムラの表情を見上げる。いつもの二人とは逆の位置で目線を交わされ、瞬間ナカムラの心臓が大きく鼓動を打つ。
「ふふ、あのとき少ししか含んでいなかったのに、日差しも強かったせいかクラクラして、気付いたときは学生の一人に抱っこされるみたいな恰好でした。学生が胡座をかいた上に座り、背中を胸にあずけて。見上げると、その大学生が、そう、ちょうど今のナカムラさんみたいな困ったような心配そうな顔で見てて、目が合ったらまた眠ってしまって」
ナカムラの顔を見上げたままクスクス笑い目を細めるカガミ。その色素の薄い長い睫毛が照明に照らされ溶けそうになるのをナカムラは陶然と眺める。
「とても、気持ちが良かった……今みたいに、頭を撫でられて、髪に指を差し入れられて」
これは、本当にカガミなのだろうか。誘うようなカガミの媚態に当惑する。
「……警視、そろそろ出ましょうか。明日もある事ですし」
「そうですね」
自分から言い出しながらも密かに未練を残しつつ、心地好いざわめきと琥珀色の芳香ただよう席からナカムラは腰を上げた。

昼間とはうって変わりひんやりとした夜気が、酔いで上気した頰を撫でた。
大通りに続く暗い路地に足を踏み出したとき、前を行くカガミの体がよろめき傾いだのを見てナカムラは慌てて支える。
「大丈夫ですか、警視」
カガミはふうと息を吐き、ナカムラにしがみつく。が、やがて俯いたままくつくつと喉の奥で笑い始めた。
「え、おい」
「……ナカムラさん、私みたいなこどもにお酒を飲ませる時、どんな感じがするものなんです?」
暗がりの中、カガミのアルコール分を含んだ吐息がナカムラの耳元にかかる。「カガミ……」しがみつく体を支えながら、ナカムラはいつの間にか酒場の外壁に背を預けていた。
「今でも」カガミは壁との間にナカムラを挟み、凭れて囁く。
「今でも、ナカムラさんから見れば、私はまだこどもみたいなものでしょう?そういえば、あの学生達と当時の私も、ナカムラさんと今の私くらいの歳の差だったかもしれませんね」
戸惑いと眩暈がナカムラを襲う。遠い日の学生も、同じ感覚を味わったろうか。無防備にその身を委ねる「こども」に、自身も強く囚われる。
無言でカガミの頭を撫でた。店の磨り硝子の窓から漏れる弱い灯りに、カガミの髪が淡く光る。ナカムラはうっとりと目を閉じ、その柔らかな癖毛に指を沈めた。
いましばらく、他の事は忘れ、こうしていよう。

地獄の季節は既に始まっている。

往来

「カガミケイスケ、面会だ」
呼ばれ、カガミは面会室へ向かった。収監されて以来、しょっちゅうナカムラは面会に来る。それこそ以前ともに働いていた数年間と変わらぬ頻度で顔を合わせている気がするほどだ。これほど自分に時間を割いて、刑事の職務はちゃんと果たせているのだろうか。足しげく訪れてくれる、それは間違いなくうれしいのだが、それにこちらが心配する筋合いもないのだが、仮にも彼の上司だったこともある身としては気になってしまう。
「ナカムラさん、そう何度も来ては」床に目を落とし面会室の椅子に腰かけ、目を上げて面会者を見た。「やあー、カガミくん」
影男だった。
「えっ」
「ふーぅ、元気だったかね?といっても直にお会いするのは初めてなわけだが」
「どっ、どうして君がここへ」
「そりゃあ、これをこうして」ガサッ「こうだ!」
「あっ、ナカムラさん!なるほどー、って、いやおかしいでしょう!姿かたち真似たとしても許可証とか」
「あーそれくらいへいきへいき、今どきこんなカードでパスしちゃうなんてセキュリティ甘いと思うよ?とはいえ今日はナカムラ警部に借りたんだけど、ホラ」
ナカムラゼンシロウと印字された許可証。
「ナカムラさん、これをそんな易々と貸してしまうなんて……」
「あ、ナカムラ君は悪くないのだよ。私が勝手に拝借したのだから」
「……なるほど。で、今日はどうして私に?」
「そうそう、実はナカムラ君が寝込んでいてねー」
「えっ」
「しばらくここに来れそうにないみたいなので代わりにワタシが」
「でもなぜ君が」
「まあそんな事は良いから。見舞いに行ってきたまえよ」
「……いえ、それは無理に決まってるじゃないですか」
「うーんんん。君まだ自分が分かってないんだな。まあ、夜になるまで待ちたまえ。出るから」
「えっ」
「ではね、カガミくん。ナカムラ君によろしくぅー」
「えっ」
あっけにとられたカガミを置き去りにして、ナカムラの姿をした影男は出て行った。
「なんだったんだ……あ、ナカムラさん大丈夫かな」

「にいさん」
「えっ」
就寝時刻をだいぶ過ぎた頃、呼び声にカガミは目を覚ました。
「にいさん、そろそろ行くわよ?起きて」
「えっ」
「にいさんさっきから『えっ』しか言ってないよ」
「まさか……トキコ……?」
「あのね、にいさん」"トキコ"は生前のままに首をかしげる仕草で言った。
「にいさんは、もうこの世界の人間じゃなくなってるの」
「えっ」
「にいさんは、もう死んでるの」

「ほら、にいさん」
「だがトキコ、この格好で外へ出るのは」
「もー、どうせほかの人には見えないわよ。でも、にいさんが気になるというなら、ちょっと目を閉じていて」
身体の周りにふわっと風が撫ぜたような気がして、トキコの合図で目を開けると、刑事現役時代のようなスーツと靴の姿になっていた。
「あ」カガミが胸元を見下ろすと、そこには懐かしいネクタイも。
「にいさん、大事に使ってくれてありがとう。一時は外してたみたいだけど、せっかくだからまたしめてほしくって」
久しぶりにしめるトキコの贈ってくれたネクタイ。カガミは顔をほころばせ、いとおしそうにその布地をなでた。
トキコ、俺はまだ思い出せないんだ。俺はいつ、その、死んだのだろう?大体、なぜ影男が俺に伝えに来た?彼はいったい何者なんだ?」
「影男さんはね、簡単に言うと、ちょっと『ゆるい』存在なの。異なる世界を同時に見ることのできる体質、みたいな。にいさんの記憶は……今はまだいいわ。まずは、ナカムラさんのところへ行かなくちゃ」

兄妹は、ナカムラの住むアパートにたどり着く。難なく窓から居室に入ると、果たしてナカムラが使い古された布団にくるまって眠っている。いつものようにこけた頰、目が隠れるほどに伸びた前髪、無精髭。起きている時ならまだしも、眠っていると本当に疲れてそのまま果ててしまったかのような姿だ。
「……ナカムラさん?」カガミは横たわるナカムラに呼びかける。深く寝入っていると思っていたが、思いの外すぐにナカムラは目を覚ました。
「……あれえカガミどしたのこんな時間に……え!?かっ、カガミ!?えっ何お前どうしてなんでなんで!?」
「お休みのところすみません、ナカムラさん。実は俺いつの間にかしん」
「おっはよーございまぁす!ナカムラさん、その節はお世話になりました〜」
「えっ とっトキコさん?なんで君らが揃ってここに、あ、夢?」
「あのですね、にいさん死んでるのは知ってますよね。でも自覚してないから教えに来たの。そしてナカムラさん、あなたも死んでるのよ」
「なんと」
「えっ、ちょっとまて、ナカムラさんも……なのか?」
「そうよ、牛丼チェーン店でバナナの皮ですべって打ち所が悪く」
「なにそのコントみたいな死因」
「嘘だろ……なんてことだナカムラさんまで」
「驚いたねえ、牛丼屋にバナナの皮が落ちてる事もあるんだ」
「と、言うわけで」咳払いをして、トキコが宣告する。「ふたりとも、地縛霊やめて成仏しましょ!」小首かしげる癖も昔のままに。

トキコが惨殺されその骸を吊されたことで、カガミは断罪という名の連続殺人を犯し、ナカムラはギリギリまでカガミを救うべく奔走した。が、叶わずにカガミは刑死、失意でぼんやりとしていたナカムラは足元がおろそかになり馴染みの店で転倒しあっけなく死亡。
「ごめんね!そもそもわたしが気をつけていれば、ふたりもこんなふうに人生に幕を閉じることも無かったね」
「何を言うんだ、お前のせいであるものか!すべてはスナガが、スナガを放置した法が……いや違う、そもそもお前を守れなかった俺の罪だ。そしてお前が殺されたことに逆上して、傲慢にも断罪と称して犯罪者に身を落としてしまった俺の罪だ。すまない、お前の死を二重に穢してしまって。すみませんナカムラさん、俺のために奔走させて、疲れ果てさせてしまって……ッ」
「あああ、ちょっとちょっと、カガミ何泣いてんの~死んでまでさ。みんなでそれなりに頑張って、結果こうなったんだからもういいんじゃない?そんなふうに自分責めてるきみたち見ると、おれだって、もっと良いやり様があったかもしれないのになあって落ちこんじゃうよぉ」
「ナカムラさん、でも」
「でもさ、死んじゃっても今こうして三人で話せるなんて、おれ達けっこうラッキーなんじゃない?トキコさん、よく迎えに来てくれたねえ、でなきゃおれ、死んでんのに気付かないでずっと働き続けてたよーせっかく死んだんだから、気楽に過ごしたいもんねえ。ありがと」
「やだ、もう、ナカムラさん泣かせないでよ死んでるのに。それににいさん、わたしね、もう憶えてないのよ、殺された時の事。だから、そんなふうに思いつめないで」
「ほんとか、トキコ
「ほんとよ。もう、怖くないし何ともないよ。だいじょうぶ」
「そうか……そうか」

「おやー、もう来てたんだね諸君」影男がゆらりふらりとやってきた。
「はーい、その節はどうも影男さん」
「……はっ、ちょっと待て。影男くん、君、ナカムラさんが寝込んでいるから見舞いに来いと言ってたが、病気どころか亡くなっていたじゃないか!」
カガミが食ってかかった。
「いやぁ、だってきみ妹さんがいきなり行ったらびっくりするだろう?それにきみが自分の状態に本当に気付いているか分からないと彼女が言うので、まずはいちおう生身のワタシが、ワンクッション置こうと思ったのだよー」
「いやそれワケわからないし、びっくり回数が増えただけだよ……」
「まあまあ、もういいじゃないにいさん。それに私の方も一応気を利かしたのよ?ナカムラさんを迎えに行くならにいさん一人で行きたいんじゃないかな、なーんて。もしにいさんが知ってて地縛霊やってるなら、愛しのナカムラさんが寝込んで動けないと分かればにいさん自分からすっ飛んでいくだろうって」
「すまん、トキコ。よけい意味が分からないのだが……」
「それじゃ影男さん、わたしたちそろそろ行きますね」混乱しているカガミをよそに、トキコが切り出す。
「あーそうそう、これからも女の子に手ェ出しちゃだめだよー、まあだいじょぶだと思うけどさぁ」ナカムラが影男にくぎを刺す。
「……ナカムラさんは彼の正体をご存じなのですか?」
「へ?あっそーか、そういえばなんで彼、死んでるおれたちとこんな風にしゃべってるんだろうねえ?」脱力するカガミを見て、ナカムラはいっそうヘラヘラする。
「まあ君たち、せっかく死んだのだ、これからは元気に楽しく死人ライフを楽しみたまえ。ではワタシも暇ではないので失礼するよ。今日も少女たちを見守る使命があるからね、ごきげんようー」
「元気に……死人ライフ……」
「ははは、ほーらカガミ、リラックスリラックス~」

幻想と奇想の乱歩奇譚世界で、彼らの最期はこのようなものであったかも知れない。

断罪週間(5/3~5/9)と逮捕までの雑記

(5/13、最後の方に追記)
以下メモとしゃらくせえ考察です。お嫌いな方はごめんね。

ハシバとコバヤシはカガミから連絡(4話冒頭、5/9)が入るまで現二十面相の犯行を把握してないor個別の模倣犯によるものと思っている
アケチはネット・マスコミ情報は把握、ハシバ・コバヤシが不在時にカガミからある程度は聞いていたかも。だが他の模倣犯に引き続き、特に行動を起こしていないように見えるのは何故だろう。「なりそこないの模倣者ども、二十面相は全て捕まえると決めた」と言っていたのに(8話

被害者の犯行と断罪方法
 バラバラ殺人→解体
 連続レイプ犯→性器切り取り
 殺人後遺体焼却→焼き殺す

5/8犯行~5/9発覚?の被害者は
 死体に石膏塗りたくり彫像仕立て(被害者:女性
 水槽に沈める(女子高生?
 皮剥ぎ(男性

予告動画(5/9ナカムラと飲んだ後に犯行?
 自宅放火、通り魔殺人

殺人は、予告動画アップされた時から、「今から24時間以内」に行われる。これまでの犯行は予告通り遂行されている。


以下、想像・妄想まじえた時系列順。
【5/9】
カガミが自宅放火と通り魔殺人をした者の殺害予告動画をアップ
カガミからアケチ宅へ二十面相3件同時犯行を知らせる電話
カガミがアケチ宅へ
アケチが玄関の石膏の粉から、カガミの犯行と見抜く
アケチからナカムラの携帯へ電話。
ナカムラが携帯画面を見てアケチからの電話と知り、席を外しカガミが居ない場所で通話。アケチがカガミの銃の弾丸すり替え依頼。(これから黒蜥蜴に依頼する内容も伝えたかも)
通話終了後、ナカムラがその足で弾丸をすり替えに行く
部屋に戻ってきたナカムラが、カガミを飲みに誘う。(カガミは今夜中の犯行予定があるはずだが、下手に断って疑いを持たれる事が無いよう応じたのか)
アケチが黒蜥蜴の房へ行き、ワタヌキの不起訴・釈放するよう警察上部へ圧力をかけるよう依頼
飲んだ後ナカムラと別れ、予告した殺人を遂行。
カガミのスマホに、ワタヌキ不起訴・釈放の報せが届く
カガミ、ワタヌキ殺害予告動画を作成しておく
【5/10~5/11】
午前、ワタヌキが釈放される
カガミ、作成済みのワタヌキ殺害予告動画をアップ
ナカムラがカガミの席に行き、予告動画がアップされた事を伝える。カガミ「そう、みたいですね」
夜、カガミがワタヌキの馴染みの風俗店店員に(警察であることは明かせないため、金を握らせたか通報すると脅したかで)ワタヌキを必ず店内に引き入れるよう要請
ワタヌキが店員の誘いで風俗店へ入る
先回りして店に潜入していたカガミ、過去のワタヌキ自身の犯行の手口通り、食物に睡眠薬を混ぜ、昏倒したワタヌキをセメント工場へ運ぶ
ワタヌキ、目を覚ます
以降アニメ通りの展開へ

感情がすぐに顔に出るカガミにしては、意外に演技が上手だった(自分の犯行をアケチにしゃあしゃあと報告、捜査協力を依頼)
不眠不休にしても、予告相手を逃さず殺人するという異様な手際の良さから、本当に単独犯だったのかかなり疑問。単独でないならだれが協力?死体の作り方など、検屍官ミナミが協力していたのでは。もしそうならナミコシもすべてを把握していたのでは?
…と言うか、断罪予告された被害者は無防備すぎないかなーワタヌキ君は相当抜けていたんだとしてもね。
警察だって予告に沿って被害者の居場所を張って守ろうとする所だろうに。

などと考えてると、やっぱりカガミはその立場を利用して警察の捜査を妨害したのかなぁ、ナカムラさんも薄々知っててトボけてたのかなぁ、なんて勘ぐっちゃったりしますね。


いろいろ想像・妄想させてくれる乱歩奇譚、まだまだ楽しめそうです。

6月のおもいで 続

「ふぁー今朝も眠いねえ」
いつものように布団の温みを名残惜しく思いつつナカムラが伸びをする。窓の方を見ると既に開いているカーテンから光はまだ漏れていない。
「あらー、今日はおてんとさんも寝坊かな」そんな事をまだ目ざめきらぬ頭でぼんやり考えていると、玄関のドアが開く音がした。
「あ、起きてらっしゃいましたかナカムラさん」
「おーカガミおはよ、また走ってきたの?まいんちえらいねえ」
「いえ、習慣ですから。すみません、すぐ支度します」
「ああ、いいよいいよ、先にシャワー浴びといで。」

カガミが出所して、ひと月が経とうとしていた。身を寄せるあてのないカガミを、ナカムラが当然のように自宅に呼んで以来、窮屈ながらも割と愉快に共同生活を送っている。
当初カガミはナカムラに気遣って同じ時間帯に寝起きしていたが、やがて、収監前までは毎朝続けていた早朝ジョギングを再開するようになっていた。
そして、朝食を作るのはカガミの役割だ。不器用ながらも生来の生真面目さ故で、着実に手際も良くなってきている。

「お、納豆にオクラが入ってる。これ美味いよねー」
「旬なので刻んで入れてみました。ナカムラさんも好きならよかったです」
「うん、ネバネバは体に良いしねえ。味噌汁も塩梅良いなあ、カガミ腕上げたね」
「ありがとうございます、ようやくダシを入れるのを忘れないようになってきました」
「おっと、ちょいとゆっくりしすぎちゃったかな、ごちそうさん
「はい、行ってらっしゃいナカムラさん。……あ、そうだ。これから降りそうな感じでしたから、傘忘れずに持っていってください」
「はいよーありがとな、カガミ」

ナカムラが出かけるのを見送り、部屋に戻ったカガミが食器を片付けようとすると、ちゃぶ台の上にナカムラの携帯が置きっぱなしになっているのに気がついた。
「まずい!追っかけないと」
ひっつかんで出ようとした矢先、携帯が鳴った。
「はい、ナカムラさん?」
「ああカガミ、よかったー」ナカムラがホッとした声で応答する。
「いまどちらですか、これから追いかけようとしたところです」
「ああ、いいよー、近いしいったん戻るよ。じゃ」
ガチャン
「うーん、ほんとはこっちから持ってった方が時間のロスも少なくて良いんだが…仕方ない、待つか」
カガミは携帯を置いて台所に戻ろうとしたが、「……あれ?」と思い、またちゃぶ台に戻る。携帯を再び手に取り、パカッと開けた瞬間。
「あっ」
と声が出た。
懐かしい画像。まだ「カガミちゃん」と呼ばれていた頃、署の近くの公園でカタツムリに夢中になって写真を撮っている姿を、ナカムラが撮影したものだ。そして、その数年後、ナカムラが自分の携帯の待ち受けにしていることを「自白」したのだった。……懐かしさと当惑に、カガミはナカムラの携帯を持ったまま、ぼうっと立ち尽くす。

「……ただいま?」
すぐ後ろで声がして、カガミは飛び上がった。
「な、ナカムラさん」
「どしたのよーチャイム鳴らしても出ないしさ……あ、それ」
ナカムラがカガミの手にした携帯を指さす。カガミははっと気がついて、ナカムラの手に携帯を渡した。
「ナカムラさん、まだその待ち受け使っていたんですか」
「あ!ハ、ハハハ、そうなんだよねぇ、ほらほら、以前カガミに良いよって言ってもらえたからさぁ。他に使いたい写真もないしさぁ……えっと、まずかった?いいよね?」
「ナカムラさん」
何をどう答えていいのか、ちょっとの間、頭が回らなかった。
ほんとに、このひとは。
「勿論です。いえ、懐かしくて、それにあれからだいぶ経つのに、今でも待ち受けにしていただいてるなんて、びっくりして」
「これ、カガミいい顔して笑ってるよねぇ。おれ、カガミがうれしそうなの見るの好きなんだ。でもそんなのカガミはキモいのかなぁって、実は気になったりしててさぁ」
「いえ、ずっと使ってもらってて、俺も嬉しいです」
顔をほころばせた途端、思わず涙がこぼれた。
「え、なにカガミ、泣いてんの?」
「あ、あれ?」ぽろぽろと止まらない涙に、カガミ自身も当惑する。
「やっだなあ、そんなに嬉しいの?なんか照れるじゃない」ナカムラは、そんなカガミの背をぽんぽんとたたいて言った。「そんなに嬉しいなら、その泣き顔も撮っちゃうよー?ついでに待ち受けにしちゃおっかなあ~」
「い、いや、それは勘弁してください!!」
あわててカガミが制止する。一瞬ののち、顔を見合わせ二人は吹き出した。
「はは、は……あ?おれ何しに家戻ってきたんだっけ」
「あっ、ナカムラさん、時間は」
「……え?ああっまずい、遅刻だー!」「ナカムラさん携帯を!」
ナカムラは、ばたばたと慌ただしくまた玄関を駆けだしていった。

はー、と息をつく。そして、
「ありがとうございます。」
カガミは、ナカムラの走り去った方角へ、頭を下げて呟いた。


機種こそ何度か変わったが、ナカムラの携帯の中にいるカガミは、いつも目を輝かせカタツムリにスマホを向けて笑っている。

地下へ

直通エレベーターが警視庁最下層へと辿りつく。
分厚い鋼鉄の壁で周囲の音が完全に遮断された空間で、自身の足音と衣擦れの音のみを聞きながら、長い廊下を目的の房へ向かう。
突き当りに立つ当直官にバッジを見せ、正面のドアが重低音を響かせ開いてゆくのを眺める。
入室し、さらにだだ広いコンクリート空間の奥、目指す男が待っていた。
「や、調子どう?」
ニィッと笑いナカムラがカガミに問いかける。
「ええ、おかげさまで」
冗談とも皮肉ともとれそうな返事をする。
「カガミ、ちょっと瘦せたんじゃない?ちゃんと食ってる?」
「べつに変わりないですよナカムラさん」

「で?なにか訊きたいことがあって来たんでしょ?」
「ええ、三年前にナミコシがあなたと最後に交わしたという電話について」


ナカムラが現・二十面相となり、わずか一週間で15人もの老若男女を殺害してからすでに三年が経っていた。犯行当時、ナカムラの上司でパートナーでもあったカガミ警視は、16人めの「断罪」を機関ヤタガラスのかかえる少年探偵アケチの助言を受けて阻止、ナカムラを捕縛。……が、その後も二十面相の出現は続いていた。

「でもね、二十面相は終わらないよ」


「昨日、三年前失踪したナミコシを名乗る人物がネット上に現れ、暗黒星の再起動を宣告しました。投稿された動画がこれです」
カガミは持参したタブレットPCの画面をナカムラに向けた。
「投稿時の声は加工処理されていましたが、ある程度の復元を施した結果、ほぼ彼に間違いないという判定結果が出ました。ナカムラさん、あなたがナミコシと交わした電話の内容について、もう一度詳しくお聞かせ願えませんでしょうか」
「うーん、もうかなりおぼろげになっちゃったなあ。わたしが逮捕された直後にとった調書見た方がいいんじゃないの?」
「当時のあなたの供述は、相当伏せられた部分があるように思えます……ああ、私が直接あなたの取り調べをすれば良かったのですが。私が担当から外されず、さらにトキコが拉致されていなければ」
「あぁそうだったねえ。妹さんは元気?」
「ええ、お陰様で。今はイタリアへ研修に行っています」
互いに気を許すことは無いようで、それでも時折、ふたりは過日のように言葉を交わす。


「ナカムラさん……なぜ」
目の前の光景が信じられず、カガミは立ち尽くす。
「あなた以前、自分だけで悪を認定して裁くなんて傲慢だ、と言った。なのに」
「だって、悔しがってたじゃん。捕まえても捕まえても、彼らは解放されちゃう、って。こないだも、ワタヌキに殴りかかってたでしょ?だめですよー取調中にそんなことしちゃ。わたしが抑えなかったら、もう一発殴ってたよね。そこまでしたら降格処分食らうよ?」
伏せていた顔を上げ、ナカムラはいつもと変わらぬ笑い顔で続けた。
「ま、でもね、警視は真っ正直すぎるけどそこが警視の良いところだもんね。それにね、警視があいつらに愚弄され続けるの、そろそろ我慢の限界だったしさ。だからさ、カタつけちゃったんだよ。まあ、見つかっちゃったし、もう、ここまでかな」
「私のせいですか?私が、あなたを犯罪者にしてしまったんですか」
「いやまあ、丁度良い頃合いだったんだろうねー。自分だけで、悪を認定するのはいかんでしょうが、警視もさ、彼らを世に再び解き放たれてしまうのが納得できないって言うからさぁ、それでね、ああもう我慢する必要なんて無いかなー、って思ってさ」
「ナカムラさん」
「だからさ、警視のせいじゃないよ。きっと、わたしはいつかはこうしてたんだよ」
「嫌です」
「警視?」
「嫌だ。どうして俺があなたを捕らえなきゃならないんだ。ナカムラさん私も」
「やめな」
ナカムラはカガミの目を睨み低く怒鳴った。
「おまえ、カッとなって撃とうとしたり殴ろうとしたり逃げようとしたり、いつまで新米気分でいるんだよ。おれはね、随分長く堪えてたんだ。それをお前みたいな若造がカンタンに真似しようなんざ冗談じゃないよ?」
凄みをきかせた声に思わずカガミがひるんだ。ナカムラはそれを見てまたへらっと相好を崩す。
「さあ、カガミ」
「もう、嫌ですナカムラさん」
「ホラ、駄々をこねないでさ。探偵さんに任せようなんて思うなよ。おまえが、おれに引導を渡すんだ」



ナカムラはカガミ警視により逮捕、しかし取り調べは手加減することが無いよう別の人間に任された。その頃すでに二十面相が広く世間より義賊扱いされており、処遇によっては騒動を引き起こしかねないと危惧されたため、ナカムラの身柄は新宿プリズンに移され外の目に晒されることはなくなった。ただカガミだけが、ナカムラの元を訪れる。



「ご協力ありがとうございます。では、いずれまた伺います」
「ふふ、お役に立てれば光栄至極。そんじゃあまたね、カガミちゃん。」